絵本を読みたいお年頃。

パンダをこよなく愛するあの日の少女が徒然なるままに書く絵本のレビュー。

【レビューno.2】「ママが死ぬ」ってなんだろう。たった5分の作品が生む、きっと忘れられない「笑って、こらえて」

 『ママがおばけになっちゃった!』
絵本作家・のぶみさんが手掛けた最新作品。Huffingtonpostで見つけたこんな記事、ふと先日大都会の本屋さんで立ち読みをして時のことを思い出したのでまとめておきます。 

Amazonランキング1位 「ママが死んじゃう絵本」なのにママたちから大人気のわけ | QREATORS
2015/10/09 19:08

子どもにとって 「ダイキライ」な絵本

「これは子どもが大キライな絵本なんです」

作者であるのぶみさんは、インタビューでそう述べています。絵本と言えば、一般的には子どものためのものと考えられるでしょうから、「子どもに嫌われては元も子もないのでは? 」と思いたくなってしまいます。

しかし、内容はといえば確かに「子どもにとって、一番考えたくないこと」がテーマの絵本。だって、「ママが死んじゃう」のですからね。

もう20年も生きた私でさえ、やはり「ママが死んじゃったら」なんて考えるのは嫌です。怖くて、そもそも想像できなくて、できれば遠いいつかの話であってほしいわけです。

ましてやこれを読むのは幼い子どもたちですから、子どもながらにも相当のインパクトがあるのではないかと思います。

でも、それは「ママ」にとっても同じくらい怖いことなのかもしれません。私には経験がありませんが、でもきっと、この作品をお膝の上で読み聞かせているころには「この子のために生きなきゃ」って強く強く思っている頃なのではないかと思うのです。

そんな時期に、「ママが死んじゃう」なんていうテーマが胸に突き刺さらないことはないでしょう。

それでも、「ママ」が「子ども」に読むっていうこと

記事によると、のぶみさんはこの作品を1000人に読み聞かせて気づいたことがあるそうです。

それは、「ママへの愛」。この作品を読んでいる約5分の間に泣いてしまったり、逃げてしまったりと、最後まで聞けなかった子どもたちのその行動は「ママへの愛情の裏返し」だということのようです。

そしてのぶみさんはこう続けます。

この本で改めてママが大好きだと感じるんだと思います。だから読み終わった後、ママにくっついて離れなくなったりします。」

きっとこの作品に出合う頃は「ママ」という存在を意識し始めて、お友達のママを知って、やっと「この人こそが自分のママだ」ということがわかる頃。そしていつでもそばにいることが当たり前になってきた頃。

でもほんとはね、「当たり前」じゃないんだよ。君の大好きなママが、毎日いつでも君のそばにいてくれることは、とっても幸せなことなんだよ。君は幸せ者だね! そんなことをこの作品は子どもたちに気づかせるのではないでしょうか。

そして同時に、ママたちがこの作品をお子さんたちに読み聞かせる頃は、お子さんたちが飛び跳ねたり転げまわったり、走り回ったり泥んこになることが多くなる頃なのではないでしょうか。

そんな忙しくて大変な毎日かと思いますが、「あなたがあなたの大好きなお子さんの隣に毎日いられて、笑ったり怒ったり心配したりできることは、とっても幸せなことなんですよ」なんてことを、読んでいるママたちに感じさせるのかもしれません。

こんなインパクトの強い絵本を、「ママ」が「子ども」に読み聞かせるその時間や空間は、「愛情」を伝え合う、そして認識しあうためにあるのかもしれませんね。

とある日の、とある大都会の本屋さんで

先日、私はとある大都会の本屋さんで、話題になっていたこの作品を手にしました。

タイトルからして、涙もろい私には絶対に読めない作品だと予想をつけていたものの、好奇心に負けて読んだわけです。しかし案外、重くなくユーモアの続く作品でした。

けれども、その子どもらしい笑いの中に、切なさと、脆さと、強い優しさを感じるのです。感動って、こんなに簡単にするもの?(笑) と、なぜか少し悔しくなりました。

読んでいたそのわずかな時間で、笑って、涙をこらえて、また笑って、気づいたころにはそれを人に話していたのです。今日こんなお話に出会ったんだよ、と。その時に話した内容や感想は、今もほとんどかわりません。ただやはり、もう一回読んでみたい。もう一回読んだら、きっと違うところに目が行くと思うから。もう一度読んでみたいのです。

もう一度読みたくなる絵本というもの

僕は、「もう1回読んで!」と子どもがせがんで持ってくるような絵本がいい絵本だと思っていて、そういう本を描いていきたい。』

のぶみさんはインタビューでそう語ります。

私もその通りだと思うのです。大体名作だといわれる作品は、長いものであれ、短いものであれ、喜劇であれ悲劇であれ、何年か経った頃に「あの本、久しぶりに読みたい」と思ってしまいます。

この作品には、きっと今より大人になった私が「そういえばあの作品読みたい」っと思っているだろうなあというのが容易に思いつくんですよね(笑) それがいつのことだかはわかりませんが、きっと、ふと思い返して読みたくなるんだと思います。

絵本というと、子供向けの短くて絵の多い作品というイメージがありますが、良い作品に対する「また読みたい」という気持ちの対象外ではないでしょう。特にこの作品は、おそらく読むたびに見えるところが違うんだと思います。だからこそ、想像ができる。

きっとまた読みたい、
そして、多くの方に読んでほしい作品です。
できればママになったばかりの方に。同世代のママさんに。

素敵な作品でした。